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実験ノートと文房具のはなし

理系大学生のための良い実験レポートを書く指針 - ぱんたろに

に続けて理系大学生向けの話。

実験ノートはいったいどのようなペンで、どうやって書かれるべきか。

ノートをとるための筆記用具といえば、

  • 鉛筆、シャーペン
  • ボールペン
  • 万年筆

といったものが挙げられます。

そもそも何のために実験ノートをとるのかといえば、行った実験とそれによって得られた結果をきちんと記録しておくためなので

  • 記録が改ざんされないこと
  • 時間がたっても明瞭に読み取れること

が大切になります。

改ざんと保存に耐えうる筆記具とは

それゆえ記録の改ざんに対して弱い鉛筆、シャーペンで記録をとるべきではありません。

フリクションボールペンのような熱で消せるペンも同様です。
また、万年筆の中でも古典インクと呼ばれるインクは市販のインク消しで消せてしまうため好ましくありません。

時間がたっても明瞭に読み取れるためには、万が一の水濡れ等にも備えて置ければベストでしょう。
工学系の実験ならともかく、化学系の実験を行う場合には水濡れの危険性が付きまといます。
水濡れに強いという意味では顔料インクを用いたペンが適切でしょう。
さらに顔料インクは耐光性にも優れています。

 

万年筆の顔料インクといえばセーラーの極黒が有名。
ただ万年筆に顔料インクを使うと詰まりやすくなるという話もあるので注意。

 

 

文房具マニアとしては万年筆でノートをとりたいけれども、実験ノートは殴り書きのようになってしまうときも多いのでちょっと躊躇してます。 

 

 

顔料インクのボールペンも様々あります。
書き味の好みに合わせて選ぶといいと思います。

例えばuniのシグノとか。

 

 

顔料インクがいいよねーという話をしてきましたが、指導教官からはボールペンで書くように!という指導はあってもインクの種類について言及されたことはありません。。

ノートは...

本当はノートについても語りたいところですが、私の配属されている研究室では 支給されたノートを使うことになっているので、ノートにはこだわれていません。

自分で選べるとしたら...多分Campusノートだろうなぁ。

コンビニでも売ってたりする入手性の良さと万年筆で書いても裏抜けしない品質の安定感、そして価格とのバランスが素晴らしいです。

さすがコクヨ

 

 

 というわけで実験ノートと文房具について思いを馳せてみました。

やっぱり文房具、好きだなぁ。。

理系大学生のための良い実験レポートを書く指針

日々実験とレポートに追われている理系大学生のぱんたろにが良いレポートを書くために気を付けていることをまとめました。
いったい何をどう書けば良いレポートが書けるのか、という指針を示したいと思います。

 

  良いレポートとは?

良いレポートは何が"良い"のでしょうか?

それはずばり、「内容」と「書き方」です。

何を当然のことを言っているのだ、と思われるかもしれませんが、この2つに分けてそれぞれを良くしていく方法を考える必要があります。

 

内容について

まずは内容をよくするにはどうすればいいのか。大きく2つの要素に分けられます。

  • 早くに取りかかり、遅くに終わらせる
  • 正しい結果を得ようとしない

 無意識を利用する!? 「早くに取りかかり、遅くに終わらせる」

レポートの提出期限の前日に取りかかり、徹夜で終わらせたのでは良いレポートは書けないことはわかっていただけると思います。

しかし、早くに取りかかり、早くに終わらせるのではなく早く取りかかって、なおかつ遅くに終わらせることがポイントです。
人間は、考えていないつもりでも何か取りかかり始めたことについては無意識化でもずっと考えてしまいます。

これは「ツァイガルニク効果*1」でも説明できます。ツァイガルニク効果とは未達成のこと、中断されていることについて既にやり遂げたことよりも覚えている、思い出しやすい、という効果のことです。

 

また、新事業のアイデアを考えてもらう課題を被験者に行わせた実験があります。その際にマインスイーパーをして適度に課題を先延ばししてもらった被験者の方が、すぐさま課題に取りかかってもらった被験者グループよりもアイデアクリエイティビティが16%も高く評価されました。

この時、重要なのはクリエイティビティが向上したのは、課題を知らされてからマインスイーパーをさせられたグループで、マインスイーパーをしてから課題を教えられて考えだしてもよい影響は現れませんでした。先に課題を知り、それをわざわざ先延ばしにすることで創造性が発揮された、ということです。

これについてはアダム・グラント: 独創的な人の驚くべき習慣 | TED Talkで述べられています。

すなわち、適切な先延ばしは考える時間をとる、と言い換えることができるということです。*2

 

それゆえ、オススメの方法は、実験を終えてすぐにレポートの設計図を書いてしまうことです。

設計図、といっても図ではなく、レポートの目次アウトラインを書くようなイメージです。例としては以下のようなものです。

1.実験の目的

2.実験方法

2.1○○の実験方法

 図2.1 実験装置の図

2.2××の実験方法

3.実験結果

3.1○○の実験結果

 図3.1~3.3 オシロスコープで取得した図

3.2××の実験結果

 図3.4 △△の図

  表3.1 デジタルマルチメータで測った値

4.考察4.1○○の実験で~~の結果が出た理由

 このとき装置がうまく動作せず、交換した

4.2××の実験で~~となった理由

  AがBだからCという結果が出たと書く予定

5.参考文献

 

実験レポートでは書き方、章立て、添付すべきデータに指定がある場合も多いですし、答えるべき設問が用意される場合もあります。何をどう書くべきか、全体を見通しながら、添付すべきデータをすべて先に「図2.1 実験装置の図」のように言葉だけで書いておけば書き落とす危険性が減ります。

また、答えるべき設問が用意されていれば、その設問をきちんと理解することで無意識に考えておくこともできますし、探すべき文献の見当をつけることもできます。
実際にレポートを書くときにはこの設計図を見ながら書くことになります。

このとき装置がうまく動作せず、交換した」といったことも実験を終えて記憶が新しいうちにここに書いておくことで、レポートを書く際に自分に大きなヒントを残しておくことができます。

この後どうすべきかは、特に述べる必要はないでしょう。設計図を書いて、後はやりたいことをやって先延ばししておけばいいのです。

ただ、設計図を書いて準備までして、デッドラインに間に合わないことのないようにご注意ください。

 

失敗は宝!正しい結果を得ようとしない

授業の一環で行われる実験では、調べれば簡単に正しい実験結果がわかります。

しかし、実験機器の精度であったり、実験に不慣れで手際が悪かったり、はたまた温度や湿度といった環境のせいで、実際に実験を行うとなかなか正しい結果は得られないものです。

その際に、知識として持っている正しい結果にどうしても近づけたくなってしまう気持ちもわかります。「正しい手法で正しく実験を行ったら、正しい結果が得られました。」というのは最もレポートが書きやすい形です。

ですが、レポートを出題する側はそういった正しさを一切求めていません
出題者側の視点で見れば、大学の規模によっては何百人と同じ実験を行い、同じレポートを書いて提出するわけで、すべてが「正しい結果」なわけがないとわかっています。よって面白い、評価されるレポートというのは正しい結果が得られたものではなく、正しくない結果が得られたのはなぜかを考察したものです。

これは実際に研究生活がはじまれば、誰も正しい結果など知っている人がいないことを研究しなければならないため、その準備として行わせている実験とそのレポートでも「考える」ことを重要視しているからです。

 

例えば、私の経験では完全に方法を間違えて実験してしまったことに、実験終了後に気づいてそのままレポートを書かなければならない事態に陥ったことがあります。それでも、「このように間違えて実験を行ったためにこの結果になった。正しく実験したら、こんな結果が得られるだろう。」といったようにレポートを書き、そのレポートの最高点を獲得することができました。結果ではなく考えることが重要視されていることがわかる一例だと思います。

 

書き方について

次に書き方を良くするためには以下の点に気を付ける必要があります。

  • 相手が何を知っているのかを明らかにする
  • 図表を多くし、一文を短くする
  • 意味が明らかでない文は書かない

相手が何を知っているのかを明らかにするのは非常に大切なことです。

何か変数を置いて考える時にはその変数が何を意味するかをきちんと明記しておく必要がありますし、一方で、レポートの中で電流とは何かを教授相手にくどくど説明したりする必要はありません。

 

また、文章で長々と書くよりも図表を用いたら一発で意味が伝わる場合があります。そういうときは積極的に図表を用いるべきです。

文章で書く場合にも意味がより伝わりやすいように、意味が二転三転するような文章は避けるべきです。そのためには一文の長さをできるだけ短くして、簡潔に書く必要があります。

 

同様に簡潔に書くためには、その文を書く意味を自分に問いかけてみるべきです。

実験から得られた事実を述べるのか、結果から考察した自分の考えを述べるのか、といったことがあいまいになってしまっている場合があります。

その文は何を伝えるために書かれているのか、即答できないようであれば書く必要はないでしょう。

レポートの枚数が多いほうが高評価につながるように感じられますが、それは意味のある文章をたくさん書いた場合であると認識する必要があります。ただ枚数を稼ぐためにだらだらと書いてしまうと、一度に多くのレポートを読む必要がある採点者の心証はあまりよくないでしょう。

その文章の着地点はっきりさせておくために、レポートの設計図に「AがBだからCという結果が出たと書く予定」といったようにその章では何を述べるつもりなのかを書いておくと、実際にレポートを書くのが大変楽になります。

 

まとめ

まとめると、よいレポートを書くためには内容と書き方を良くする必要があります。内容は、早くに取りかかり遅くに終わらせることで無意識を活用し、正しくない結果からでも考察を深めていくことでよくできます。書き方は、図表を多用しながら、相手にわかりやすく短く簡潔な文を連ねることでよくできます。

 

また、大学生にとって情報は大変重要です。先に同じ実験を終え、レポートを書いた友人がいれば積極的に質問し、アドバイスを求めることでレポートのクオリティを非常に短時間で上げることができます。

具体的には、設問があればその設問へのヒントや使った参考文献などを聞いてみることをおすすめします。

 

よりレポートの書き方を体系立てて学びたい方は「理科系の作文技術」を一読することを勧めます。

この記事の内容は大きくこの本の影響を受けていると思います。

 

理科系の作文技術 (中公新書 (624))

理科系の作文技術 (中公新書 (624))

 

長くなりましたが最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

 

*1:カフェの店員が客の注文をメモも取らずに正確に記憶し、商品を提供し終えると、その注文の内容を一瞬で忘れてしまうことを心理学者のツァイガルニクが発見したことからこのように呼ばれます。

*2:先延ばしについてもっと知りたい方はティム・アーバン: 先延ばし魔の頭の中はどうなっているか | TED Talkもご覧になることをお勧めします

GIVE&TAKE「与える人」こそ成功する時代

いつも自分ばかりこの人にはしてあげている気がする...、あるいはあの人にはいつも何かをしてもらってばかりでお返しができていない...
なんて思いに駆られることは割とよくある事ではないだろうか。
みんなGIVE&TAKEの関係、そのバランスに思うところがあるだろう。

 

そしてまさしくそのGIVE&TAKEについて言及した本が「GIVE&TAKE「与える人」こそ成功する時代」だ。
著者はペンシルベニア大学ウォートン校で史上最年少の終身教授となった組織心理学者のアダム・グラント(Adam Grant)。
「フォーチュン」誌の「世界でもっとも優秀な40歳以下の教授40人」に選ばれるなど華々しい経歴を持つ教授のデビュー作がこの本。

 

 

以下、本の内容全体のあっさりしたまとめ。

 

この本では人を以下の3種類のタイプに分けている。

  • ギバー(giver:惜しみなく人に与える人。give>take)
  • マッチャー(matcher:ギブ&テイクのバランスをとる(マッチさせる)人。give=take)
  • テイカー(taker:自分の利益を真っ先に持っていく人。give<take)

本の題名「GIVE&TAKE「与える人」こそ成功する時代」からわかるように、この本の結論は「ギバーが成功する」である。
まさしく、情けは人の為ならず、である。

 

ギバーは自己犠牲的なお人好しだと考えられ、そんなギバーはこの競争社会で成功できるわけがない、と思いがちである。
実際、エンジニアリングの世界では成功から最も遠い位置にいるのはギバーであるという調査結果が著書には書かれている。
他の人の仕事を手伝ってばかりで自分の仕事を終えることができないのだ。


ほかにも、ギバーはテイカーより収入が平均14%低く、犯罪の被害者になるリスクは2倍、人への影響力も23%劣ることがわかっているそうだ。


ここまで聞くと、明らかに題名詐欺な気がするが、話はここでは終わらない。
最も成功を収める人たちもまたギバーであったのである。
テイカーとマッチャーはほどほどの成功にとどまるのだろうと著者は述べている。

 

ベルギーの医学部生600人以上を対象にした調査でも成績の最も低い学生たちも最も高い学生たちもギバーであるという結果が出ている。
この医学部全体ではギバーは成績が11%も高いそうだ。

 

こうして成功を収めるギバーは単なる自己犠牲の精神の持ち主ではない
彼らは他者志向的なのだ。自身の成功はもちろん、他者の成功にまで一生懸命になる。
誰かの役に立つことのために力を尽くせる、だからこそ周りの人たちもギバーの成功に協力的になる。

そして現代社会ではたった一人では成功できない。誰かと助け合って様々な困難を乗り越えた先に成功がある。
それゆえギバーが最も成功するのも当然かもしれない。

 

以上が非常にあっさりした全体のまとめ。

 

 

ここからは興味深かったことをピックアップして。

 

著書には、スタンフォード大学の心理学者らの研究によれば、アメリカ人は独立を強さの象徴頼り合うことを弱さであると考える、と記されている。
これは特にテイカーに当てはまる思考で、自分が他者よりも優れていると考える傾向のあるテイカーは、人に頼ると弱みを見せることに繋がりつぶされてしまうと考えるそうだ。

一方でギバーは頼り合うことを弱さとはみなさず、お互いに協力しあい、それぞれの持つスキルで大きな利益を生み出すことができると考える。

 

このギバーの頼り合うことに対する考え方は心理学でいう、「認知的不協和」を生み出し、よりギバーが人から好かれる一因となっていると考えられる。
つまり、ギバーが助けを求めることで、それに相手が応じたときに、その応じた理由をそのギバーに対して好意を抱いているからと認知を変えてしまうのだ。
好きでもない相手を助けてしまうという「不協和」を認知を変えることによって解消するのだ。
人に頼みごとをするのを躊躇してしまう人には特に有益なテクニックだろう。

 

そして著者は身につけるべきは「質問力」である、とも述べている。
良く相手に質問し、相手の状況を理解する事、そして自分がなにか力になれることを探すことはギバーにとって必要なことである。
さらに、この質問によってアドバイスを求めることで互いに協力し合うことに繋げることができる。

 

また、人助けはまとめてやるべきだ、というのもこの本で提唱されている。
すなわち、一日一善を一週間やるくらいなら、1日に7つの人助けをまとめてするべきだ、というのだ。

被験者に毎週5つの親切を6週間行ってもらう実験を行い、この被験者を一日に一つずつ親切を行うグループと毎週ある一日に5つの親切をまとめて行うグループに分けた。
6週間後、行った親切の数は同じだったにもかかわらず、まとめて良いことを行ったグループの方がずっと幸福を感じるようになった

 

この実験を行った心理学者のソニア・リュボミアスキー

一日一つずつだと、親切な行ないがもつ特徴やパワーが減少するためか、もしくは被験者が習慣的に行っている親切な振る舞いと見分けがつきにくくなるからだろう 

と推測している。
やるなら一気にやる。そうすればより幸福を感じられるようになるのだろう。

 

日々こつこつと親切を行うことが美徳だとされることも多い中で、まとめて与えるべきだ、というのは新鮮に感じられた。
親切を行うことで誰かに喜んでもらえる。さらにまとめて与えることで、自分の幸福度まで上昇させることができる。
ここでも「情けは人の為ならず」の法則が働いているのかもしれない。

 

この本にはもっと詳しく

  • なぜギバーが成功するのか
  • ギバーが与えすぎて燃え尽きてしまわないためにはどうすればよいか
  • テイカーに搾取されないためにはどうすべきか
  • テイカーをギバーへ変えることはできるのか

といったことまで様々な人の例と研究されたデータを挙げながらわかりやすく、かつ詳しく書かれている。

 

一つ答えを言ってしまえば、テイカーをギバーへ変えることはできる
それには2つの方法がある。一つ目は、与えるところが人に見えるようにすること
自分が与えているところが誰かの目に触れるようになっていれば、その行動が自分の評判を上げると分かっているから、テイカーは積極的に与えるようになる。
しかし、人目がなくなればテイカーは与えることをやめてしまう。

根本的にテイカーをギバーに変えるためには、認知的不協和」を用いるのだ。これが二つ目の方法だ。
すなわち、テイカーが自分の選択でギバー的な行動をとるようにすれば、その行動と自分の認識の不協和を解消しようと、次第にギバーになっていくのだ。
自分自身でどのように与えるか、誰に与えるかを決めて行動するようにさせれば、成功するギバーに変わっていくことができる。

 

最後に本書の最後の言葉を引用したい。

 起きている時間の大半を仕事に費やしている私たちが、ほんの少しでもギバーになったら、もっと大きな成功や、豊かな人生や、より鮮やかな時間が手に入るだろうか―。
 それは、やってみるだけの価値はある。

 

この本の脚注と参考文献、またアクションのための提言はweb上pdfとして見ることができる...そうだが、アクションのための提言しか見つけられていない。

検索能力の低さを露呈するようで恥ずかしい...。

しかし、この無料で見られるpdfもボリュームがあって一見の価値がある。

ぜひ見てみてほしい。

 

本日の参考文献:

www.amazon.co.jp