ぱんたろに

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GIVE&TAKE「与える人」こそ成功する時代

いつも自分ばかりこの人にはしてあげている気がする...、あるいはあの人にはいつも何かをしてもらってばかりでお返しができていない...
なんて思いに駆られることは割とよくある事ではないだろうか。
みんなGIVE&TAKEの関係、そのバランスに思うところがあるだろう。

 

そしてまさしくそのGIVE&TAKEについて言及した本が「GIVE&TAKE「与える人」こそ成功する時代」だ。
著者はペンシルベニア大学ウォートン校で史上最年少の終身教授となった組織心理学者のアダム・グラント(Adam Grant)。
「フォーチュン」誌の「世界でもっとも優秀な40歳以下の教授40人」に選ばれるなど華々しい経歴を持つ教授のデビュー作がこの本。

 

 

以下、本の内容全体のあっさりしたまとめ。

 

この本では人を以下の3種類のタイプに分けている。

  • ギバー(giver:惜しみなく人に与える人。give>take)
  • マッチャー(matcher:ギブ&テイクのバランスをとる(マッチさせる)人。give=take)
  • テイカー(taker:自分の利益を真っ先に持っていく人。give<take)

本の題名「GIVE&TAKE「与える人」こそ成功する時代」からわかるように、この本の結論は「ギバーが成功する」である。
まさしく、情けは人の為ならず、である。

 

ギバーは自己犠牲的なお人好しだと考えられ、そんなギバーはこの競争社会で成功できるわけがない、と思いがちである。
実際、エンジニアリングの世界では成功から最も遠い位置にいるのはギバーであるという調査結果が著書には書かれている。
他の人の仕事を手伝ってばかりで自分の仕事を終えることができないのだ。


ほかにも、ギバーはテイカーより収入が平均14%低く、犯罪の被害者になるリスクは2倍、人への影響力も23%劣ることがわかっているそうだ。


ここまで聞くと、明らかに題名詐欺な気がするが、話はここでは終わらない。
最も成功を収める人たちもまたギバーであったのである。
テイカーとマッチャーはほどほどの成功にとどまるのだろうと著者は述べている。

 

ベルギーの医学部生600人以上を対象にした調査でも成績の最も低い学生たちも最も高い学生たちもギバーであるという結果が出ている。
この医学部全体ではギバーは成績が11%も高いそうだ。

 

こうして成功を収めるギバーは単なる自己犠牲の精神の持ち主ではない
彼らは他者志向的なのだ。自身の成功はもちろん、他者の成功にまで一生懸命になる。
誰かの役に立つことのために力を尽くせる、だからこそ周りの人たちもギバーの成功に協力的になる。

そして現代社会ではたった一人では成功できない。誰かと助け合って様々な困難を乗り越えた先に成功がある。
それゆえギバーが最も成功するのも当然かもしれない。

 

以上が非常にあっさりした全体のまとめ。

 

 

ここからは興味深かったことをピックアップして。

 

著書には、スタンフォード大学の心理学者らの研究によれば、アメリカ人は独立を強さの象徴頼り合うことを弱さであると考える、と記されている。
これは特にテイカーに当てはまる思考で、自分が他者よりも優れていると考える傾向のあるテイカーは、人に頼ると弱みを見せることに繋がりつぶされてしまうと考えるそうだ。

一方でギバーは頼り合うことを弱さとはみなさず、お互いに協力しあい、それぞれの持つスキルで大きな利益を生み出すことができると考える。

 

このギバーの頼り合うことに対する考え方は心理学でいう、「認知的不協和」を生み出し、よりギバーが人から好かれる一因となっていると考えられる。
つまり、ギバーが助けを求めることで、それに相手が応じたときに、その応じた理由をそのギバーに対して好意を抱いているからと認知を変えてしまうのだ。
好きでもない相手を助けてしまうという「不協和」を認知を変えることによって解消するのだ。
人に頼みごとをするのを躊躇してしまう人には特に有益なテクニックだろう。

 

そして著者は身につけるべきは「質問力」である、とも述べている。
良く相手に質問し、相手の状況を理解する事、そして自分がなにか力になれることを探すことはギバーにとって必要なことである。
さらに、この質問によってアドバイスを求めることで互いに協力し合うことに繋げることができる。

 

また、人助けはまとめてやるべきだ、というのもこの本で提唱されている。
すなわち、一日一善を一週間やるくらいなら、1日に7つの人助けをまとめてするべきだ、というのだ。

被験者に毎週5つの親切を6週間行ってもらう実験を行い、この被験者を一日に一つずつ親切を行うグループと毎週ある一日に5つの親切をまとめて行うグループに分けた。
6週間後、行った親切の数は同じだったにもかかわらず、まとめて良いことを行ったグループの方がずっと幸福を感じるようになった

 

この実験を行った心理学者のソニア・リュボミアスキー

一日一つずつだと、親切な行ないがもつ特徴やパワーが減少するためか、もしくは被験者が習慣的に行っている親切な振る舞いと見分けがつきにくくなるからだろう 

と推測している。
やるなら一気にやる。そうすればより幸福を感じられるようになるのだろう。

 

日々こつこつと親切を行うことが美徳だとされることも多い中で、まとめて与えるべきだ、というのは新鮮に感じられた。
親切を行うことで誰かに喜んでもらえる。さらにまとめて与えることで、自分の幸福度まで上昇させることができる。
ここでも「情けは人の為ならず」の法則が働いているのかもしれない。

 

この本にはもっと詳しく

  • なぜギバーが成功するのか
  • ギバーが与えすぎて燃え尽きてしまわないためにはどうすればよいか
  • テイカーに搾取されないためにはどうすべきか
  • テイカーをギバーへ変えることはできるのか

といったことまで様々な人の例と研究されたデータを挙げながらわかりやすく、かつ詳しく書かれている。

 

一つ答えを言ってしまえば、テイカーをギバーへ変えることはできる
それには2つの方法がある。一つ目は、与えるところが人に見えるようにすること
自分が与えているところが誰かの目に触れるようになっていれば、その行動が自分の評判を上げると分かっているから、テイカーは積極的に与えるようになる。
しかし、人目がなくなればテイカーは与えることをやめてしまう。

根本的にテイカーをギバーに変えるためには、認知的不協和」を用いるのだ。これが二つ目の方法だ。
すなわち、テイカーが自分の選択でギバー的な行動をとるようにすれば、その行動と自分の認識の不協和を解消しようと、次第にギバーになっていくのだ。
自分自身でどのように与えるか、誰に与えるかを決めて行動するようにさせれば、成功するギバーに変わっていくことができる。

 

最後に本書の最後の言葉を引用したい。

 起きている時間の大半を仕事に費やしている私たちが、ほんの少しでもギバーになったら、もっと大きな成功や、豊かな人生や、より鮮やかな時間が手に入るだろうか―。
 それは、やってみるだけの価値はある。

 

この本の脚注と参考文献、またアクションのための提言はweb上pdfとして見ることができる...そうだが、アクションのための提言しか見つけられていない。

検索能力の低さを露呈するようで恥ずかしい...。

しかし、この無料で見られるpdfもボリュームがあって一見の価値がある。

ぜひ見てみてほしい。

 

本日の参考文献:

www.amazon.co.jp